採用広報の飯野です。
2024年11月末、株式会社kubell、MOSH株式会社、BASE株式会社の3社による採用イベントをBASE本社で実施しました。テーマは「プラットフォームビジネス×事業開発の醍醐味」。当社からは上級執行役員の山村が登壇し、今注目のBizDev職についてディスカッションをおこないました。
この記事では、イベント当日のトークの一部をレポート形式でお伝えします。各社の事業開発思想やフェーズについて参考になれば幸いです。
【登壇者 Profile】
写真右:桐谷 豪(きりたに ごう)
株式会社kubell 執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長
大学在学中より創業フェーズのスタートアップに参画し、ジョイントベンチャー設立や複数事業の立ち上げに従事し、ユニコーン企業へ。その後、AI系ベンチャーである株式会社ABEJAへ入社し、データ関連サービスの事業責任者を担う。2020年10月にChatwork株式会社(現 株式会社kubell)に入社し、BPaaSのサービス立ち上げ責任者を務めたのち、2024年1月より執行役員に就任。インキュベーション領域を管掌し、新規事業の推進とR&Dを担当。
写真左:秋葉 俊之介(あきば しゅんのすけ)
MOSH株式会社 ビジネス部門責任者 兼 事業開発
リクルートキャリア(現:株式会社リクルート)入社。採用領域のメディア営業で首都圏の大手法人を担当。リクルートグループの最も優れたナレッジを共有する「TOPGUN(営業部門)」を受賞。社内異動を経て、新規決済ソリューションの事業立ち上げプロジェクトに参画。コロナ禍でMOSHにて副業(約1年間) を経て、2022年(シリーズB調達のタイミング)でMOSH入社。セールス&サクセス→CS→Bizdevのキャリアを経て現職。
写真中央:山村 兼司(やまむら けんじ)
BASE株式会社 上級執行役員COO BASE事業 責任者
サントリー清涼飲料部門の営業を経て、2004年株式会社リクルートに入社。学び事業にて、営業、商品企画を担当、2009年 『ケイコとマナブ.net』編集長、2010年 共同購入サービス『ポンパレ』事業(ゼネラルマネジャー 以下GM)の立ち上げに参画し全国拡販を推進。その後、CS推進部(GM)、ECビジネス推進室(GM)を歴任。関連企業での経営企画部長、『ショプリエ』『Airレジ』等の新規事業企画を経て、2017年1月にBASE株式会社に入社。現在は、上級執行役員COOとしてBASE事業の責任者を務める。
BizDevをどう定義するか
最初のテーマは「事業開発とは?」。各社での事業開発について、またどんな事業開発をどのように定義しているのかについてディスカッションをおこないました。
BASE 山村:BASE事業のBizDevの役割は、ネットショップ作成サービス「BASE」の基本機能に加え、ショップの課題やペインを解決する機能やサービスを企画・開発し、付加価値を向上させることです。追加機能の企画・開発により、これまで「BASE」を利用していなかった人々にも使ってもらえるようになります。
たとえば、「YouTube ショッピング連携」や「かんたん発送」などの拡張機能が挙げられます。
また、外部プラットフォームや事業者との連携を通じて「BASE」の価値向上を図ることも、BizDevの重要な役割です。一方、すべてのショップが利用する基本機能の価値向上は、PdMが担っています。
とはいえ、「BASE」の事業開発はPdMやデザイナー、さらにはリリース前のマーケティングチームとも連携しながら進めるため、役割を厳密に線引きするのは難しいのが実情です。
「BASE」のBizDevの魅力は、ショップ数の多さに起因する課題の多様性と幅広さにあると思います。現在、「BASE」のショップ開設数は230万を超えているため、それだけ多くの課題が存在します。良い機能を開発できれば、多くのショップの課題を解決できるだけでなく、新たなショップの増加にもつながります。また、自分の取り組みの成果が見えやすく、未来につながる点も事業開発をするおもしろさの一つだと感じています。
kubell 桐谷さん:kubellのBizDevでは事業開発を「フェーズ」「環境」「手段」「思想」の4つの起点から考えています。
1つ目の「フェーズ」はわかりやすくて、0→1、1→10、10→100のどこにあたるかという話。
2つ目は「環境」です。アプローチと領域が決定しているかしていないのかという話です。たとえば、「アプローチ方法は決まっていないけど、この領域はやった方が良いよね」と事業開発がスタートすることがあれば、「この方のケイパビリティやスキルを生かしたいから、はまる領域を探そう」とすることもあります。
3つ目は、「手段」。事業開発というと、自社立ち上げの新規事業の0→1イメージが強いかもしれませんが、アライアンスやM&Aなどいろんな手段があり、これらも僕らは事業開発と呼んでいます。
最後の4つ目は、「思想」です。プロダクトアウトやマーケットインなどの話です。プロダクトアウトは「ニーズやマーケットはわからないけど、自分たちがこのプロダクトが欲しいから作ろう」という考え方から広がっていくもの。マーケットインは、「ニーズやマーケットに合わせて戦略的にプロダクトを作っていく」という考え方で、2〜3つ目のプロダクトでは比較的マーケットインで作ることも多いです。さらに僕らはマーケットアウトもあるよね、という話をよくしています。「ニーズはあるけどお客さんがそのニーズを認識していない」という状態です。そういったところを戦略的に作っていくのがマーケットアウトです。
このあたりの解釈のずれが起こらないように枠を囲うことで、BizDevカンパニーとして人が育つ環境を作れると思っています。
MOSH 秋葉さん:MOSHは正社員が約40人でBizDevは3人くらいの小規模な組織なので、ちょうどBizDevをチームとして定義していかなければいけないフェーズです。事業開発チームが掲げているミッションは、持続的な事業グロースの基盤を作るために、カスタマーバリューとカテゴリーとデリバリーチャネルなど既存の再現性を持って成長できるところ以外を拡張していくことと定義しています。 既存の顧客に対して価値を提供し浸透させていくのはセールスやマーケで担うことが多く、それ以外をBizDevがやっています。
ビジネスモデルや事業フェーズの違いなどにより、どこまでをBizDevの仕事と定義するかは各社まちまちであり、期待される役割は異なっていました。自社がどのフェーズでどんな価値を創造する事業開発をしているのかを理解することの重要性を改めて感じました。
事業開発・事業経営までのキャリア
続いてのテーマは「事業開発・事業経営までのキャリア」です。事業開発という職は、多岐に渡る仕事内容からいわゆる"なんでも屋"になりやすい側面があり、キャリアが見えづらいことが往々にしてあります。そこで、各社の登壇者がどのようなキャリアを経てBizDevへ辿り着いたのかを聞きました。
kubell 桐谷さん:「気が付いたらここに行き着いた」という感じです(笑)あえて挙げると、一番最初の会社では営業のようなことをしていました。電話営業をして、そうすると不具合が起きたりオペレーションを改善しなければいけなかったりするので、それを一人でやっていました。自分のなかでは営業あがりという感覚が強いですが、一番最初から事業開発だったとも言えるかもしれません。
BASE 山村:僕も桐谷さんに近いです。「目の前のお客さんを助けたいという気持ちで仕事をしていたら、今のポジションになっていた」という感じです。営業からキャリアをスタートしたため、「お客さんが困っていることを解決するためにはどうすれば良いか」「もっとこういうことをしてあげたい」という想いを形にすること=事業開発というような感じですね。
情報誌の営業をしていた2000年代初頭は、ちょうどビジネスの中心がインターネットへと移り変わるタイミングでした。そこで、当時の責任者に情報誌をネットへ移行するアイデアを色々と提案をしていたところ、「自分でやってみたらいい」と今でいうPdMのような役割を任せてもらえました。とはいえ、僕自身も未経験だったため、見よう見まねで試行錯誤を重ねながら取り組みました。その結果、できることの幅が広がり、現在の事業開発のような仕事にもつながっていったと思います。
kubell 桐谷さん:お話を聞いていて思ったのは、伸びている会社、変革期の会社にいると業務が漏れてくる可能性が高いということです。安定している会社にいると職種の幅を超えることがあまりないと思いますが、新しいものが生まれている会社や伸びている会社にいると、BizDevが生まれやすいという構造になるのかなと。
BASE 山村:そうですね。当時もやりたいと言ったらやらせてくれる風潮がありました。そうしてやり続けていると、お客さんの課題を解決する能力が必然的に上がっていきます。
MOSH 秋葉さん:僕も前職の経験で思うのは、既存事業で型ができているところと型ができていないところでは、事業開発の機会の数が全然違うなと。会社もそうですし、事業がどんなフェーズなのかというところも大事だなと思いました。
目の前の課題か、未来の課題か
バックグラウンドに営業経験を持つ3名は、ディスカッションのなかで「事業開発と営業の関わり」に言及しました。ディスカッションのなかでは、各社の事業開発に対する思想の違いが垣間見える場面もありました。kubellの桐谷さんは「BizDevと営業を切り離すのは難しい」と話す一方で、BASEの山村さんは「営業がなくても世の中に使ってもらうプロダクトを作りたい」と話します。
kubell 桐谷さん:僕はいろんなところで「BizDevは営業だ」と言っています。BPaaSの立ち上げのときもそうですが、企画書より前に営業資料を作り、お客さんに直接会いにいきました。サービスが完成する前であっても、営業して初めてサービスに価値があるかどうか、お客さんがお金を払ってでもやりたいと思ってくれるかどうかが見えてくると思っています。一番最初はとにかく営業を泥臭くやることが大事だと思っています。僕のなかで営業って事業開発と一緒なんですよね。あまり境目は持っていません。
BASE 山村:「BASE」はkubellさんのアプローチとは少し異なる考え方をしています。ざっくり言えば、「営業しなくても自然と世の中に広がるプロダクトを作りたい」という思想を持っています。「ショップオーナーは本当はなにを求めているのか?」を深く想像し、「5年後、10年後にどうあるべきか」という未来を起点にプロダクトを設計することで、ユーザー体験や社会を一歩先へ進められたらと考えています。
たとえば、BASE社の金融事業は、目の前の課題を解決するために始めたわけではありません。ショップオーナーが「資金調達をしたい」と明確に意識していなくても、資金を得る機会があれば結果的に事業を成長させることができるのではないか。そうした未来を想像するところからスタートしました。
創業者でCEOの鶴岡の言葉を借りれば、「5年後の未来を待ち伏せするプロダクトを作る」という考え方です。BASE社では、理想を掲げ、それを実現するプロダクトを生み出すことを目指しています。
MOSH 秋葉さん:めちゃくちゃおもしろいですね。僕はもともと営業のバックグラウンドなので、営業的なBIzDevとして事業開発をしてきたんですけど、直近の事業フェーズでは「プロダクト価値をどう磨いていくか」にシフトチェンジしようとしています。そのために顧客接点を生かすのはもちろんなんですが、お客さんが求めているものを抽象化したときに「それって結局どういう価値なんだろう」というのを考えられる組織であるかどうかはすごく大事だなと思っているんですよね。
山村さんのなかで、前職とBASE社での事業開発の違いはどんなところにありますか?
BASE 山村:追っている目標やチャレンジする時間軸が全然違うと思っています。当時の前職は、「事業を立ち上げたら1年後にこのくらいの利益が出ていないとクローズします」というスタンスで、短期的に利益を出す必要があるので、より目の前にある顕在化した課題を解決しないといけないという特徴があると思います。
一方でBASE社は、”今”ももちろん重要なのですが、「5年後10年後の価値を作っていくこと」を大事にしています。ショップオーナーが次のステージに行くために気づいていない課題に対して、僕らがプロダクトを提供することで引き上げられたらいいなという考えです。
kubell 桐谷さん:自分がこのプロダクトの一番のユーザーになれるかどうかが鍵になるのかなと思い、お話を聞いていました。実は主力事業の「Chatwork」は、CEOが自分で欲しいと思って社内用のツールとして作ったことがきっかけです。それが評価されて広まり、今に至ります。そのため「Chatwork」も最初は一切営業をしていませんでした。まさに5年後10年後の当たり前を作った事例のひとつだなと思いながら聞いていました。
どんな価値創造をしているのかを考える
MOSH 秋葉さん:事業開発と一言で言ってもめちゃくちゃ広いので、自分が今どの事業フェーズでどういう価値をつくるために事業開発をしているのかを自覚することが大事だなと思っています。
MOSHは0→1、1→10フェーズなので、がむしゃらに事業開発をしていきますし、事業を開発していくことが組織を開発していくこととニアリーイコールになっているので、自分がそういう価値作りをしていると思っています。
リソースは限られているので、自分がどういうケイパビリティを今の事業開発のロールで担っているのかを認識していると自分の成果の出し方の再現性を理解できると思ったりもしますね。
これまでMOSHの事業は大きく4フェーズくらいありました。
初期は、サービス業のオンラインプラットフォームは時代に早すぎて3年くらい低空飛行を続けています。その後コロナ禍でヨガやフィットネスのオンラインレッスンで使われ始め、その後コロナの余波で同じ顧客の収益の安定化を目的に、サブスクや決済と連動した会員サイトなどをプロダクトバリューとして作っていきました。僕の入社は2022年頃になるんですが、市場的にサブスクで月商100万円くらいを稼げるクリエイターさんが多くなかったので、違うユースケースに染み出さなきゃということで皆でセールスをしていました。今はBizDevチーム全体で事業開発をしているフェーズです。
kubell 桐谷さん:ユースケースを特定しにいったり、お客さんの生態を理解したりするのは大事ですよね。
kubellのBizDevチームも顧客の解像度を上げるために2つやっていることがあります。1つは構造を理解すること。経産省が出している中小企業白書などをしっかり読むように伝えています。そして2つ目はインサイドセールスが商談している内容をたくさん聞くこと。この両サイドをしっかりとやるのが大事だなと思っています。
MOSH 秋葉さん:まさに構造を把握するのは大事だなと思っています。目標達成のためにはなにかを構造をハックしないと実現しないんですよね。そしてハックするためには構造を理解していくと、なにがすべてのセンターピンになっているのかが見えてくると思っています。そうすると目先の改善ではなくセンターピンを倒しにいくことができるので、少し引いた目線でなにがキーポイントになっているかを探すことは、事業開発全体で大事なポイントだなと思っています。
最後に
今回はプラットフォームビジネスを展開している3社のコラボでBizDevに関するディスカッションをおこないました。企業によってBizDevの定義は異なり、仕事内容もまちまちであるBizDevという職種。事業成長をさせるためになにが必要なのかを愚直に考え続けることの重要性を登壇者の皆さまから学ばせていただきました。