BASE Book編集部です。
今回取材したのは、ネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」に関するクリエイティブの推進や、ブランドデザイン組織の運用づくりを担う髙木さんです。
髙木さんが担っているのは、個々の制作進行だけでなく、デザイナーが力を発揮しやすい環境や、連携の流れそのものを整える仕事。案件の進行管理、関係者との調整、期待値の整理、組織運用の仕組みづくりを通じて、クリエイティブが前に進む状態を支える専門性を持つ仕事です。
CM制作会社でのキャリアを起点に、デジタル動画、オウンドメディア、YouTube 運用、ウェビナー、事業会社でのプロモーションへと領域を広げ、2023年3月にBASE株式会社へ入社しました。
髙木さんの話から見えてきたのは、AIによってクリエイティブ・フロー作業のやり方が変わる今、人に求められる役割もまた変わっている、ということ。
手を動かすだけではなく、期待値をそろえ、言葉を翻訳し、チームが回る仕組みをつくる。そんな仕事の輪郭と、BASEで働くおもしろさについて聞きました。

【Profile】
髙木 悠太(たかぎ ゆうた)
BASE Department Branding Division Brand Design Group
2008年にCM制作会社に入社し、プロダクションマネージャーとしてキャリアをスタート。2023年3月にBASE株式会社に入社。現在は、BASE Department Branding Divisionで、BASE事業に関わるプロジェクト推進、外部連携、オペレーション設計、AI活用の整備などを担う。
「デザイナー」ではなく、クリエイティブを前に進める人

まずは、今どんな役割を担っているのか教えてください。
インハウスの案件では、社内のいろんな部署から発生するニーズやクリエイティブ依頼に対応し、アウトプットのプランニングやメンバーのアサインなど、全体の進行管理をおこなっています。リリースやキャンペーンのバナー作成、LPの修正、オウンドメディアのコンテンツ作成などが多いですね。
外部パートナーと一緒にクリエイティブをつくる案件では、「BASE」側のプロマネとして進行管理や社内調整、パートナーとの折衝を担当します。
ただ、今は案件単位の進行だけではなく、ブランドデザイン組織全体が回るように、オペレーションやルール、連携の仕組みを整える仕事の比重も大きくなっています。
世の中の言葉で近いものを探すなら、クリエイティブを前に進めるための推進役、という表現が近いのかもしれません。
でも、肩書きが先にあるというより、今チームに必要なことをやっていたら、自然とそういう仕事になってきた感覚のほうが強いですね。
案件の中で言えば、プロデューサーとも、プロジェクトマネージャーとも言える。
それを、BASE事業に対してもやっている、というイメージです。
映像制作の現場で身についた、同時に物事を見る力
これまでのキャリアは、どこからはじまったのでしょうか?
最初は、CM制作会社でした。学生のころから映像に関わる仕事がしたくて、大学でも近いことを学んでいて、卒業後は博報堂プロダクツに入りました。
当時やっていたのは、いわゆるプロダクションマネージャーの仕事です。撮影に向けて、スタッフの手配や予算の管理、進行の設計をして、当日も現場が止まらないように動く。そんな役割でした。
映像って、構成要素が本当に多いんです。
台本(コンテ)があって、出演者がいて、カメラがいて、照明がいて、美術がいて、編集があって、音もある。しかもそれが、同じ時間軸の上で一斉に動いていく。静止画なら一枚で完結することもありますが、映像は一秒の中にもたくさんの判断が詰まっています。
だから自然と、複数の人が同時に動いている状況を見ながら、何が詰まりそうか、どこでズレが起きそうかを考えるようになりました。
今やっている仕事も、関係者が多いなかで、認識をそろえて前に進めることが大事なので、そのときの経験はかなり土台になっています。
制作会社から、事業会社へ。納品して終わらない仕事をしたかった

そこから、どのようにキャリアが広がっていったのでしょうか。
30歳前後で、最初の転職をしました。
CM制作の仕事は好きだったのですが、このままいくと、進行管理のキャリアの延長線上だけで終わってしまうかもしれない、という感覚もあって。もう少し領域を広げたいと思ったんです。
2社目では、デジタル動画や広告運用に近い環境に移りました。そこで、企画を提案したり、自分でインタビューしたり、プレゼンしたり、制作以外のことも少しずつ担うようになりました。
その後は、オウンドメディアやYouTube チャンネルの運用、ウェビナーの現場設計などにも携わってきました。
大きかったのは、「作って終わり」ではなく、「それがどう届くか」まで見たいと思うようになったことです。
受託側にいると、納品した時点で仕事は一区切りになります。でも事業会社なら、そのあとユーザーにどう届いたか、事業にどう効いたかまで含めて考えられる。その感覚が、自分には合っていると思って、事業会社側に軸足を移していきました。
そして、BASEに入社しました。
クリエイティブをつくるだけではなく、事業やプロダクトの成長にどうつなげるかまで見られる場所だ、と感じたのが大きかったです。
AIで減ったのは、手前の作業。増えたのは、考える時間

BASEに入ってから、AIが仕事に与えた変化は大きかったですか?
かなり大きいです。
いちばんわかりやすいのは、議事録を取らなくてよくなったことですね。以前は、誰が何を言ったか、次の会議までに何を準備するかを細かく整理していました。でも今は、そのあたりをAIに任せられるようになりました。
それだけでも、かなり時間の使い方が変わりました。
ドキュメントのたたき台を作るとか、情報を整理するとか、昔なら手前で時間がかかっていたことをAIがかなり引き受けてくれる。だから、そのぶん「そもそも、何を解くべきなんだっけ」「誰に届けばいいんだっけ」といった、本質的な問いに時間を使えるようになりました。
チーム全体でも、見えないところで、かなり効率化が起きている感覚があります。
以前なら、この業務量をこの人数で回し続けたら厳しいだろうな、と思うこともありました。でも最近は、アウトプットのスピードも質も上がってきている。単純に頑張っているだけでは説明しづらい変化が、たしかにあります。
ただ、本数だけを追えばいい、とは思っていません。
僕らの仕事は、クリエイティブの量産が目的ではなくて、そのアウトプットを通して、「BASE」を利用するショップオーナーさんが「やってみよう」と思えたり、「BASE」の体験に触れたりすることに意味がある。AIで余白ができたぶん、そこにどう向き合うかが、ますます大事になっていると思います。
AI前提でも、最後に残るのは「誰が、どう伝えるか」
AIが入るほど、人に求められることも変わっていきそうです。
はい、そう思います。
AIがある程度の水準まで形にしてくれるようになったからこそ、最後に何を残して、何を捨てるかを判断する力が大事になる。良し悪しを見極める力や、文脈を読む力、相手にどう伝えるかを考える力は、やっぱり人に残ると思うんです。
制作会社にいたころは、同じ役職、バックボーン、期待値の仲間が多く、専門用語も含め共通言語がありました。でもスタートアップや事業会社に入ると、ビジネス側の人、プロダクト側の人、クリエイター、それぞれが異なる前提で会話をしている。その差を埋める役割が必要になります。
「つまり、こういうことですよね」と翻訳する。
何を期待していて、どこまでならできて、何は求めないのかを整理する。そういう期待値の調整の仕事は、むしろAI時代のほうが価値が上がる気がしています。
均一にできる仕事は、これからもっと均一になっていくはずです。
だからこそ、自分にしか出せない判断や、コミュニケーションの質が問われる。何を言うかも大事ですが、誰が言うか、どう言うかも含めて価値になる。そこは、人の仕事として残り続けるんじゃないでしょうか。
クリエイティブと最新技術を、同時に試せるのがBASEのおもしろさ

最後に、BASEで働くおもしろさを教えてください。
クリエイティブだけをやる組織ではない、というところですね。
もちろん、デザインやコンテンツをちゃんと作るチームなんですけど、それと同時に、AIや新しい技術をどう使えばもっとよくなるか、ということも自然に考えている。そこがおもしろいんです。
「これを使わなきゃダメ」という縛りも必要以上に強すぎないので、自分で試しながら、自分なりのやり方を見つけやすい。
実際、チームのなかでも、もともとAIや新しい技術をいち早く取り込むのが得意だった人だけが前に出ているわけではなくて、いざ、おそるおそる触ってみたら一気に伸びる人もいる。新しいことに対して、まずやってみよう、という空気があるのはすごくいいな、と感じています。
制作側から事業会社に行きたいけど、自分にできるだろうか、と迷う人もいると思います。
でも今は、AIが手前の作業をかなり助けてくれる時代です。だからこそ、現場で培ってきた勘どころとか、人を不快にさせない進め方とか、期待値をそろえる力みたいなものが、これまで以上に生きるんじゃないでしょうか。
クリエイティブの経験を土台にしながら、もう少し広い仕事をしたい。そんな人にとって、BASEはおもしろい環境なんだと思います。
最後に
髙木さんの仕事を一言で言えば、「デザインをつくる」ことそのものではなく、「デザインが成果につながる流れをつくる」ことでした。
案件を前に進める。組織を回す。異なる言葉を翻訳する。AIによって手前の作業が軽くなるほど、その役割はむしろ重要になっていくのかもしれません。
手を動かす時間を減らし、判断や言語化に時間を使う。
その変化を前向きに受け止めながら、クリエイティブのあり方そのものを更新していく。BASEには、そんな挑戦を試しやすい土壌がある。そう感じるインタビューでした。