「これはパーパスではない。」─ 企業ミッションの“根底の想い“の言語化に奔走した経営戦略室の7ヶ月

採用の成原です。

BASEグループの次の10年に向けて新たに策定したFoundation。
すでにBASEグループ公式noteでは鶴岡さんのインタビューにてにて「We are All Owners」にいたるまでの想いを掲載していますが、BASE Bookではどのようなプロセスでプロジェクトが動いたのか、経営戦略室メンバーに今だから聞くことのできる当時の裏側を教えてもらいました。

参考) 創業10周年を迎えたBASEが新たに「Foundation」を策定。企業ミッションを実現した先に、誰もが自分らしく生きるのがあたり前の社会を作ることこそがBASEの根底の想い。|BASEグループ公式note


【Profile】
写真左:岩田 丈(いわた じょう)
経営戦略室 Department 兼 Talent&Culture Department Culture Development Division Manager
1984年生まれ。大阪大学大学院法学研究科修士修了後、三井住友カード㈱に入社し、法人カード・加盟店与信業務、カードビジネス受託業務、海外ファンド投資やベンチャー投資、海外金融機関とのアライアンス企画等戦略提携事業に従事。2018年より東京2020大会の組織委員会へ出向し、大会チケットの販売および払い戻し業務企画を担当。2022年1月にBASE入社、経営戦略室にて、企業戦略の策定ならびに人材・組織・カルチャーの課題解決に取り組む。2023年1月より、企業文化醸成を担当するCulture Development Divisionのマネジャーを兼任。

写真右:米田 愛(よねだ あい)
経営戦略室 Department 兼 Talent&Culture Department Culture Development Division
1993年生まれ。中央大学法学部国際企業関係法学科卒業後、株式会社ワークスアプリケーションズへ入社しEC通販パッケージシステムの新規営業に従事。2018年4月にBASE株式会社へ人事として入社し、採用マネージャー等を経験。2022年7月に経営戦略室へ異動し、人・組織・カルチャーの課題解決に取り組む。

先日掲載された鶴岡さんのインタビューで先んじてBASEのFoundation策定について発表されました。今日までおおよそどのくらいかかりましたか?

米田:当初の想定の倍以上はかかりましたね。2022年の9月ごろからスタートして3月に決定したので…

岩田:7ヶ月くらいですかね。

今日は7ヶ月分の想いを伺えるとのことなので楽しみです!

BASEグループの次の10年を創るためにミッションの見直しを開始

そもそもの議論のきっかけはなんだったでしょうか。

米田:私たちが所属している経営戦略室(※1)はBASEグループの次の10年に向けて必要な仕組み作りや、それに対する議論の推進をしているのですが、その中の議論の一つとして企業ミッションである「Payment to the People, Power to the People.」が今後の10年も社会貢献し続ける企業として実現したいことを伝えられるミッションかどうかという疑問を発端に、引き続き掲げ続けるべきかを検討することとなりました。まずは現在のミッションに対する経営メンバーの認識を確認するために、”Payment”、”Power”、”People”のそれぞれが何を指しているのか、現行のミッションを今後も掲げ続けるべきなのかを確認することにしました。

上級執行役員、執行役員に対してそれぞれの言葉の解釈を個別でヒアリングしてみると、みなさんの解釈が以下の認識でほぼ一致していたんです。

また、現行のミッションが今後10年も基本的に変わるべきでないという考えも一致していました。

岩田:そして、ヒアリングを通じてミッションでは明確に言語化はされていないけれど、鶴岡さんをはじめ経営メンバーの共通認識として、ミッションの根底に何か”想い”があるのではないかと気がついたんです。

出所:経営戦略室作成

※1:全社横断での中長期成長戦略の設計、グループ提供価値の最大化を推進する組織

その根底にある何か”想い”とは?

岩田:鶴岡さんのインタビューにもありますが、経営戦略室としてはその”想い”の部分である、ミッションの根底の”Why”の言語化を行うことで合意しました。
そのときは一様に「それってパーパスでは?」となったんですよね。

そこから”パーパス”の策定がスタートしたと。その後の取り組みを教えてください。

米田:2022年11月ごろ、外部のパートナーさんに先ほどのヒアリング内容の共有と鶴岡さんへのインタビューを通じて”パーパス”策定を想定した、タグラインとステートメントの言語化を依頼しました。
以前、ミッション策定にお手伝いをいただいたパートナーさんだったので、当社への理解も深く、初期案の策定までは比較的スピーディに進んでいきました。

ステートメントについては、一つ一つの単語に対して、「違和感がある」というコメントがあれば、それら全てに対して今回の策定の目的に立ち戻ったり、なぜ違和感を感じるのかを丁寧にヒアリングし、表現をアップデートするのか、変えずに残すべきなのかを細かく何度もディスカッションしました。

ここまでのお話では順調に進んでいるように感じます。

岩田:はい、ステートメント部分は徐々にアップデートされ合意形成が進んでいったので、実はこの時点では年内で決定、2023年初頭に社内へ発表することをイメージしていました。しかし、タグラインで議論が難航し、年初に社内共有できる状態までには至りませんでした。

そういえば、年初のAll Hands(※2)で、経営戦略室がパーパスを策定している趣旨の発表もされていたような…

米田:そうです、まだこのときは”パーパス”を作る予定だったんです。

※2:月一度実施されるBASEグループ全社ミーティング

拭えない違和感とその原因の発見

今回の「We are All Owners」は2023年初めの時点ですでにタグラインとして提案されていたんですか?

岩田:タグラインとして落とし込めたものの、納得してこれでいこうという状態になっていなかったです。
どことなくパーパスという名称に対して「We are All Owners」というタグラインであることに違和感が残っていて、経営メンバー全員が首を縦に振ることができていませんでした。

米田:パーパスは本来”目的”や”目標”を指しているため、他社だと「〜する」という文体や意味合いのある言葉になっているのですが、「We are All Owners」はそういった表現とは異なるので、パーパスという名称とのズレがあることに気がつき始めました。

出所:経営戦略室作成

岩田:ここで初めて、”パーパス”という名称で策定するのは適切ではないのではないかという議論になったんです。

なるほど、先ほどの根底にある何か”想い”を再度考えることになったのですね

米田:私たちも経営メンバーに「これってパーパスじゃないよね」と指摘を受けて違和感に気が付いたんですよね。

岩田:印象的だったのが、上級執行役員の藤川さんから「(パーパスであれば)”We are 〇〇”ではなく”We make 〇〇”が適切なのでは?」と言われたことです。違和感の原因はここにあったか、と。
”パーパス”を策定する、という意識が先行するあまり、”We”が指し示す範囲をしっかり定義できていないことが原因であることに、この時初めて気づいたんです。その気づき以降、”パーパス”ではなく”Foundation”としての言語化整理に舵を切りました。

「”パーパス”ではない」ことの議論を経て、辿り着いた”Foundation”

ちなみにタグラインの議論ってどのくらいかかったんですか?

岩田:2.5ヶ月くらいかな?とにかく経営メンバー全員が納得するまで議論に時間をかけました。

米田:経営戦略室で今回言語化したいものの位置付けを他社の事例もあわせて再整理したのですが、やっとのことでパーパス以外の表現を模索し始めたのも2月ごろでしたね。ビリーフ、フィロソフィー、コーポレートメッセージ、経営理念という案も出てました。

岩田:"根底"のイメージを適切に表現できる名称の候補出しを行っていく中で、ピンときたのがFoundationでした。

やっと出てきました!

“Foundation”という表現を使用する会社は多くないですよね。

米田:根底という意味だけでなく、”基盤”という意味合いをもつこの単語が人々の経済活動の基盤を作りたいという想いで付けられたBASEという社名ともマッチしていることもあり、この表現がいいよねとなりましたね。

岩田:BASEグループのミッションが他社のパーパスと近しい位置付けであることもこの時点で整理しました。 そうすると、改めて「We are All Owners」がFoundationとして適切と判断することに至るわけです。
しかもそれはミッションの上でも下でもなく、ある種セットで存在しているものと落とし込むことができました。

今回は紆余曲折あって練度を高めることができたかと思いますが、今プロジェクトを振り返って次に活かしたい反省点などありますか?

岩田:やはりというか、最初に「何をやるんだっけ?」という論点と構造化をきっちりやるべきだったと思います。特に鶴岡さんとのコミュニケーションは想像以上に徹底的にすり合わせる必要がありましたね。
ここまで自然発生的に議論を進めてしまったので、下手したら違和感を残したままパーパスとして決定していた可能性もあったかもしれません。

米田:想定通りのスケジュールで進められなかったことは反省点ではありつつ、結果論と言われるかもしれませんが、実はこれまで社内でミッションに関する込み入った議論をしたことがなかったこともあり、その過程を経ることができたのはよかったと思っています。
次の10年を考えた時に、鶴岡さんだけでなく他の上級執行役員、執行役員が自らの言葉で発信できるものにすべきと思っていたので、時間がかかったとしても個別の対話を重ねて、一つ一つの違和感を回収していったり、単語ベースでの考え方も整理したのは意義があったと感じています。

経営戦略室が見出す、経営の価値観を言語化することの意義

今回のプロジェクトでお二人が感じた経営課題などあれば教えてください。

米田:経営メンバーの中では鶴岡さんの想いや意思決定の背景、価値観の共通認識が取れていることは理解できたものの、一方で全社のメンバーが十分に理解ができるアウトプットや仕組みが足りていないことは明確に認識できました。
もちろん、組織が急に大きくなってきて難しい部分もあると思います。それでも、今回はFoundationとしてまずは経営メンバーの価値観を言語化したことは今後の経営戦略や事業推進の観点でも有益だったと言いたいです。なので、全てのメンバーがそれぞれの社歴やバックグラウンドに関係なく全員が経営の根底にある想いから理解し参画できるような指針の落とし込みは今後もトライしていきたいですね。

岩田:数字ベースの定量的指標については共通認識を図りやすいですが、定性的な表現や指標は、読み手それぞれの解釈の余地が入るためにすり合わせが難しい場面があるというのは改めて実感しました。
今回のプロジェクトに限らず、社内にはまだ解釈の余地を残している考え方や表現があるのではないかと考えています。引き続き言語化し、社内に浸透させていくことが経営戦略室が取り組むべき課題の1つだと再認識したところです。

Foundation策定プロジェクトをモデルに、言語化プロセスの精度がさらに高まると良いですね。

岩田:今回経営戦略室が取り組んだ”想いの言語化”は、プロダクト開発あるいは組織開発をブレずに精度高く取り組むためのチャレンジだったのですが、実は事例の少ない取り組みだったりするので、この記事を見て同じように困っている担当者様や興味のある方がいたら、僕のFacebookまでカジュアルにご連絡ください。ぜひ情報交換しましょう!


7ヶ月間、ミッションの根底の想いを見つめ続けたお二方の取り組みについて当時のエピソードを交え伺うことができました。

Foundationを通した共通の価値観のもとに、プロダクトや事業を通じて社会に向き合い、社会貢献できる会社を目指していけたらと思います。

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