採用広報の飯野です。
今回取材したのは、購入者向けショッピングサービス「Pay ID」アプリにショップを掲載しているオーナーさんに対し、アプリのメリットや価値を伝えるというプロジェクトです。これまでのアプリでは、ショップオーナーさんが「Pay ID」アプリにショップを掲載することで得られる成果を実感しづらいという課題がありました。
「オーナーさんにとっての『Pay ID』アプリの価値とはなにか」から定義し、プロダクトに落とし込んでいったプロジェクトについて、プロジェクトを率いたプロダクトマネージャー(以下、PdMと表記)の村上さんと、PdMセクションマネージャーの本山さんにお話を伺いました。
また、12年という年月が経ったBASEで、プロダクトマネジメントをするやりがいについても言及しています。
ぜひ最後までご覧ください。
【Profile】
写真左:村上 花瑞(むらかみ はづき)
BASE Product Management
新卒ではメルカリに入社し、約4年間CSとして全事業を経験。運用業務をはじめ、新規サービスの立ち上げ等を経験したのち、転職を視野に入れ始め、2020年1月に元同僚の誘いでBASEにCSとして入社。機能や組織の課題を解決したいという想いを上司に伝えていたところ、PdMポジションを提案され、ジョブチェンジ。現在はPdMとして第一線で活躍している。
写真右:本山 ゆうり(もとやま ゆうり)
BASE Product Management Section Manager
新卒ではDeNAに入社し、ヘルスケア領域のアプリ企画を担当。その後、サービスや企業理念に共感し、2020年12月にBASEへ転職。PdMとしてプレイングをしつつ、セクションマネージャーとしてチームマネジメントもおこなっている。
- 「Pay IDの価値とはなにか」の定義から始まったプロジェクト
- 数字は効果を測る指標。一番大切なのはユーザー体験
- 「今」の最適解はなにか?見直し、壊すを繰り返すフェーズ
- ユーザー目線で柔軟に変われる人を求める
- 最後に
「Pay IDの価値とはなにか」の定義から始まったプロジェクト
まずは今回のプロジェクトについて教えてください。
村上:購入者向けショッピングサービス「Pay ID」アプリを導入している「BASE」を利用するショップオーナーさんが、「Pay ID」にショップを掲載するメリットを感じられるようにするというプロジェクトです。
これまでは、「Pay ID」がショップの売上向上やファンの獲得にどのくらい寄与しているかがショップオーナーさんに伝わりづらい状態でした。 つまり、成果は出ているけどそれが「Pay ID」起因なのかそうではないのかがわからない状態だったんです。
そこで、「Pay ID」の介在価値を数値で見える化することで、「Pay ID」にショップを掲載するメリットを知ってもらおうと考えました。そして「Pay ID」にショップを長く掲載していただくことで利益に繋げてもらいたいという思いから、プロジェクト化したという経緯です。
「価値」と言っても、いろいろあるので難しそうですね。
本山:そうなんです。「価値をちゃんと伝えたい」ということだけは決まっていたのですが、「どうやって伝える?」「どこまで伝える?」という具体的な部分は何も決まっていない状態でした。
そのため、村上さんには「ショップオーナーさんにどのような形で『Pay ID』の価値を伝えると良いのか、というところから考えてください」とふわっとした状態から検討をお願いしました。
村上:懐かしいですね(笑)
「価値とはなにか」を具体的に落としていく作業が難しかったです。
本山:まず「価値がうまく伝わっている状態」の定義からディスカッションから始めていただきました。村上さんは、現状がどうなっているのかを丁寧に調査してくれたり、つまずいたときでも周りをうまく巻き込んでディスカッションをしてくれたりと、この3ヶ月間スピーディーにプロジェクトを進めてくれました。
そうなんですね。この抽象的なテーマ、村上さんはどのように進めていったんですか?
村上:最初は「『Pay ID』の良さってなんだろうね」というところから議論を始めました。たとえば、「BASE」を利用するショップオーナーさんが「Pay ID」も利用する傾向があるのは、アプリ上へのショップ掲載が無料だったり、買い物をする顧客の決済がよりスムーズにできたりという、さまざまなメリットがあるからです。一方で、「Pay ID」経由で売上アップに繋がっていることなど、ショップオーナーさんが知らない「Pay ID」の魅力があることに気づき、それらを言語化していきました。
その結果、まずは「ショップオーナーさんにプラスになっている「Pay ID」アプリの魅力を、画面上で目に見える形でわかるようにすること」が、価値の提供の第一歩になると定義しました。 その後に、ショップオーナーさんが付加価値を感じてくれる情報を整理し、画面上に出すためにデザインに落として進めていきました。
情報量が多いと思うのですが、画面上に出す情報はどのように絞っていったんですか?
村上:おっしゃる通りいろんな価値や多くの情報があるので悩みました。ですが、最終的には「ショップオーナーさんが価値として一番わかりやすい指標はどれか」という観点で議論し、ショップの売上や顧客情報などの基本となるデータとそれに付随する情報や内容に絞る方向性にしました。
本山:「Pay ID」アプリにショップを掲載すると、ショップオーナーさんは「Pay ID」アプリ上でお客様に向けたアクションをすることができます。その一例として、「Pay ID」アプリでショップをフォローしてくださっているお客様に、BASEのショップ管理画面からプッシュ通知を送れるようになります。村上さんとデザイナーの方には、ショップオーナーさんが「Pay ID」アプリにショップを掲載することで最終的にどんな状態を実現したいのか、またその状態の進捗状況を確認するには、どんな情報があると良いのかなどを深掘りながら、検討を進めていただきました。
村上:たしかにそうでしたね。
また、「Pay ID」アプリにショップを掲載すると、オーナーさんが購入者の方向けに取れるアクションが増える一方で、「BASEのショップ管理画面上で、対象の機能を探しづらい構造になっている」という課題も挙がりました。
たとえば、「Pay ID」アプリのフォローユーザーに対してクーポンを送れる機能と、アプリで商品のお気に入りをしてくれているユーザーに対してプッシュ通知を送れる機能が別々の場所にあったことで、ショップオーナーさんがその機能を探しづらい状態になっていました。
そこをまずは、アプリの機能を一箇所に集約したうえで情報を可視化し、ショップオーナーさんがデータとアクションをセットで見られるようにすることで、ショップ運営のPDCAを回しやすくなるのではないかと考えました。
数字は効果を測る指標。一番大切なのはユーザー体験
プロジェクトを進めるうえで、特にこだわったことはなんですか?
村上:「パッと見でわかりやすいかどうか」というUIにはかなりこだわりました。
画面上で数字や文字が並んでいてもわかりづらいと思うので、視覚で理解できるUIになっているかどうか、オーナーさんが販促活動をおこなうときの導線がスムーズかどうかなどのUXは、何度も議論を重ねましたね。今回のプロジェクトで一番大事にしていた部分だったので。議論の際は、たとえばデザイナーさんがグラフひとつにおいてもいくつもパターンを出してくれて、それを見ながらどれが一番直感的にわかりやすいかを何度も話し合いました。
本山:また、今回のプロジェクトは、BASEグループ内の組織を越境したプロジェクトだったため、より難易度が高かったと思います。BASEグループは、ネットショップ作成サービス「BASE」と、購入者向けショッピングサービス「Pay ID」で、それぞれ別の組織に分かれています。そのため今回、BASEとPay ID両方の関係者を巻き込んだ議論が必要でした。プロジェクトに関わる全員が、より良くしたいと思って意見を言った結果、どうしても議論が発散しがちだったんですよね。
村上:そうでしたね。「価値がある状態」は一人ひとりの解釈が異なる部分がどうしてもあるので、どこを最終アウトプットにするかを決めるのが難しかったです。
本山:でもそういった状況下で村上さんは、決められそうなところはしっかりと決め切りますし、いろんな人から意見が出ているときはまだ煮詰まっていないと判断して持ち帰りますし、ラインの引き方がとても上手だったのでスムーズに進んでいました。また、議論が発散したときは、オーナーさんの視点に立ち返るように進行をしていただいたので、良いバランスで発散と収束を繰り返せていたと感じています。
当たり前の話かもしれませんが、「ユーザー目線」をかなり大事にされていたんですね。
村上:そうですね。
本山:プロジェクトが立ち上がってからしばらく時間が経ってはいるのですが、村上さんは昨日も改めて「これで本当に、ショップオーナーさんが価値を感じられるのか」という話をされていて、ユーザー目線でどう感じるかという意識がかなり強いと思いました。
そうだったのですね。また今回、ユーザー体験を重視したプロジェクトということで、同時に他のプロジェクトも走らせていたと伺いました。
本山:はい。「Pay ID」アプリを通してショップと購入者の方のマッチングを増やしていくためのプロジェクトです。「Pay ID」アプリを利用し始めるユースケースや、利用後の状況をふまえつつ、どんなコンテキストでショップや商品とマッチングできると良さそうかという仮説を立てるところから始めました。現在は、考えているコンテキストでのマッチングを実現するために必要な仕組みづくりからチームで取り組んでいます。
最近は、ショップオーナーさんと購入者の方のマッチングを増やすため、ネットショップ作成サービス「BASE」を担当するPdMが、購入者向けショッピングサービス「Pay ID」のプロジェクトにも越境していくことがあります。これらのプロジェクトはその一例です。「BASE」と「Pay ID」を越境したプロジェクトは、ショップオーナーさんと購入者さんの両視点から良い体験になっているかどうかを熟考する必要があり、その分難しさも感じています。しかし、うまくいけばショップオーナーさんと購入者さんに対して、同時に良い体験の提供ができると思うので、やりがいも大きいです。
「今」の最適解はなにか?見直し、壊すを繰り返すフェーズ
今の「BASE」のプロダクト開発はどんなフェーズなんですか?
本山:リリースから12年という年月が経ち、「ショップオーナーさんがショップを開設し、注文を受け付け、発送する」という基本の機能はもちろん完成しています。しかし、ショップオーナーさんからのニーズも多様化してきているため、新しくどんな価値を提供するかだけでなく、過去に作った機能を見直して"今"最適な体験ができるサービスへとアップデートする両軸の動きが必要となっているフェーズです。
「BASE」は多くの人が使っているサービスなので、「課題解決」と「誰でも使える」を両立させていくことが求められます。スプレッドシートにあるマクロの機能のように、使える人だけが使える多機能なサービスを私たちは目指していません。
たとえば「この課題を解決してほしいけど、ここの機能は増やさないでほしい」という相反する要素の両立をどうしたら実現することができるか、みんなで議論することは多いですね。機能を追加していくだけなら簡単ですが、増やすだけでは課題解決にならないというのが「BASE」の考え方です。
村上:「難しいことを簡単にしてほしい、でも柔軟性は高くしてほしい」という議論は多く出てきますね。一方で、柔軟性を高くすると操作が複雑になるので、その塩梅はいつも難しいなと思っています。
柔軟な視点が必要なフェーズなのですね。サービスをリリースして12年が経ちますが、やれることややらなければならないことは多そうですね。
本山:そうですね。社外の方がイメージしている以上に、新しい価値の提供だけでなく以前からある機能や体験を"今"に最適な機能や体験へとアップデートすることが必要です。 機能をリリースしてから時間が経っているものも多く、ユーザー体験を抜本的に見直そうというプロジェクトも走り出しています。
時代が移り変わったり、モノが増えたりすると、「そのときの最適」や「そのときのわかりやすい」が変わっていくんですよね。「BASE」はそこにちゃんと追従しようという思想を持っています。
村上:BASE事業のプロダクト責任者の神宮司さんと議論するとき「”今”、どうなんだっけ?」と指摘してもらうことが多いです。「”昔”こうだったから、こうします」というのは、「ユーザーのため」を本気で考えているとはいえないですよね。
ユーザーのために本質的な課題解決をしている実感は強いですか?
本山:はい。その一例としてあえて、ショップオーナーさんや、今作っているプロダクトの仕様を知らない社員の方に率直なフィードバックをいただくようにしています。
PdMは、ショップオーナーさんの課題解決を最大限おこなうためにはどんな施策ができるかを常に考えていますが、それでも見落としや気づけていないこともあるのが実情です。そのため、ショップオーナーさんや社内の別チームの方にも操作をしていただき、解決したいことが解決できているかフィードバックをいただくようにしています。そして、新しい発見やより良い案が見つかったときは、一度決めた企画や仕様でも開発途中にステータスを変更することもあります。このように、「今の仕様が最適なのか」を常に考えることで、最大限の課題解決ができるように努めています。
村上:単純な数字では測れない価値や体験に重きを置いてプロダクトを考えている、BASEの価値観が好きですね。
ユーザー目線で柔軟に変われる人を求める
BASE事業にはどんな人が合うと思いますか?
村上:サービスが好きな方、オーナーさんを応援したい方に入ってもらえたら嬉しいです。
私自身、自分のショップを持って頑張っている方、ショップを通して自分の世界観を発信しているクリエイティブ分野の方のお役に立ちたいという想いがあります。 BASEグループの事業は組織全体でユーザビリティをとことん考えていて、そういったオーナーファースト、プロダクトファーストなスタンスに強く共感しました。
そのため、同じような気持ちを持っている人と一緒に働きたいなと思いますね。
本山:私も村上さんと同じ意見です。
あと別軸だと、柔軟力がある方が楽しく働ける環境だと思っています。「BASE」は10年以上経ちましたが、制度が決まりきっていなかったり、プロダクトも物事の進め方も人や時代の変化に合わせて変えながら進めています。なので、決まっていないことにモヤモヤして止まってしまう方は正直合いづらいのかなと。決まっていないことを楽しんで「自分はどうしようか」と考えるのが好きな方や、どんな形だとより良いのかを考えていくことが好きな方がマッチすると思っています。
村上:たしかに1年前と今では全然違いますもんね。入社して実感したのは「変えようと思えば変えられる」ということです。むしろ、自ら変えることができすぎてびっくりしたくらいです。レイヤー関係なく「ショップオーナーさんのためになるものなら企画でもアイディアでもなんでも持ってきて」というスタンスなので、とても良いなと思いました。
本山:村上さんに関しては、職種も変わっていますよね。
村上:はい、CSからPdMにジョブチェンジしています。私は前職からずっとCSとして働いていて、BASEに転職したときもCSとして入社しました。業務を進めるなかで、CSが使う社内ツールについて「ここが使いづらいから、こう改善したらCSの人がもっとお問い合わせ対応が楽になるのではないか」「最近こういうお問い合わせが多いのでここを改善したい」などの提案をしていたんです。ただそのときはタイミング的にも着手できる体制ではありませんでした。
そんななか、当時の上司が「今はタイミング的にもそれを実現するチームを作ることができない。ただチャレンジにはなるが、こういったポジションはどうか」とPdMを提案してくれたんです。最初はとてもびっくりしましたね。
そのようなきっかけでPdMとして働き始めましたが、課題を特定して、解決するためにどうすれば良いかを考えるという根本の部分は、CSもPdMも同じだと感じています。
村上さんの「ユーザー目線」と、「課題を根本から解決したい」という想いがPdMに合っていたんですね。それでは最後に、これからプロダクトを作っていくうえで大事にしていきたいことを教えてください。
村上:いつの時代も「オーナーファースト」というスタンスは大事にしていきたいです。今後も「BASE」は進化し、変わっていくことも多いと思いますが、根本の「ショップオーナーさんのために」は変わりません。
最後に
「オーナーファーストは変わらない」
時代が変わっても、サービスが変わっても、オーナーのために課題を解決し、より良いプロダクトを提供していく。そのためのこだわりと探究心を知れたインタビューでした。
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